DO RIBEIROの最近のブログ記事

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ホセ・ルイス・クエルダというスペインの映画監督。
スペインの暗い時代、スペイン内戦に関わるテーマを取り上げて映画を作ることが多く、
重いテーマも多いのだけど、そんな中に感じられる温かさ、映像の芸術性の高さもあって、
好きな監督の一人だ。

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「蝶の舌 (La Lengua de las Mariposas)」(1999)

かなり前に観たのたけど、
スペイン内戦勃発直前のスペインを描いた映画。
1936年、スペインの村の小学校に通うモンチョと担任のグレゴリオ先生との交流がテーマで、
先生の下でいろんなことを経験し、人間的に成長していく。しかしスペイン内戦が勃発し、
ファシスト勢力が及び、共和派である先生に危険が。。
先生と生徒の対話、自然を大事に野外で大事なことを教えてくれる先生、政治のことなど
わからないなりの子供の視点からの恐怖、表現の抑圧、思想への忠誠心、様々なことが
芸術性の高い映像で伝わってくる。

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この映画をしみじみ観ながら、飲んでいたのがリベイロの「サンクロディオ」。
それが同じ造り手だということはつゆ知らず!
それが「サンクロディオ」との出会いだった。

名称 : Sanclodio 2008
品種 : Treixadura 70.5%, Godello 8.6%, Loureira 8.6%, Torontes 7.5%, Albariño 4.7%
産地 : DO Ribeiro
生産者 : Producciones Amodiño

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ガリシアで一番知られているDOはアルバリーニョで有名なリアス・バイシャスで、その東隣に
位置するリベイロってまだまだ知られていない。でもここでもこの20年で変革が起こり、
素晴らしいワインがどんどん造られている。

白ワインがメインのDO、固有品種トレイシャドゥラやトロンテス種を主に使い、フレッシュで
酸味のある白を生み出す。リアス・バイシャスより内陸に位置し、やや大陸性気候の影響を受け、
冬の寒さは厳しく、朝晩の温度差も大きく、初春の霜のリスクも高く、厳しい環境だが、
良いワインを造る条件が揃っている。

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そのDOリベイロのゴマリス(Gomariz)の谷で、15世紀からの屋敷、6haの畑を購入、ワイン造りを
始めたのが、なんとこのセ・ルイス・クエルダ監督。
花崗岩質の土壌、「スカルコス(sucalcos)」というガリシア地方特有の、日が良く当たる斜面の
畑で栽培、100%自社畑、伝統的な栽培方法で、収量を徹底的に抑え、高品質白を造る。
2005年がファーストビンテージ、毎年、高い評価を受け、リリース後すぐ完売してしまうという。
プロジェクト自体は、この「蝶の舌」を撮り終わった直後から構想していたという。

厳しい選果後、除梗、即空気による圧搾、デブルバージュ後、ステンレスタンクで、20℃で発酵、
シュル・リー 2ヶ月することで、香気成分、ストラクチャー、複雑さを出す。
ファイニング後、収穫後6〜7ヶ月目で、瓶詰め。

2007ビンテージはパーカー91点を獲得、2006ビンテージもギア・プロエンサで93点と安定して
良いワインを造っている。

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トレイシャドゥーラって?
ガリシア地方の土着品種で、ガリシア地方内陸部リベイラ・サクラやリベイロ、ポルトガルの
北部で主に栽培され、リベイロが最も有名。収量が低く、クオリティ高いブドウ。
でも酸に少し不足など、バランスに欠けるため、単一品種でというよりは、アルバリーニョ、
ロウレイラ、ゴデージョを補助品種としてブレンドするケースが多い。

トレイシャドゥーラのベジタルでドライ、複雑な香り、味わいが楽しめる、個性的な白。
今まで飲んだリベイロで一番美味しかったな。

もともとワインが大好きだというクエルダ監督。出身はラ・マンチャ地方のアルバセテだが、
ガリシア地方を良く知り、リベイロの地、ワインに魅せられ、ワイン造りを決心したという。

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監督の最新作(2008) 「盲目のひまわり (Los Girasoles Ciegos)」も、スペイン内戦直後の話で、
フランコ時代が生み出した様々な矛盾、苦しみ、迷い、信念などが描かれる。マリベル・
ベルドゥの迫真の演技もすごく印象に残った。

クエルダ監督の映画は、どんな重いテーマでも冷静さ、謙虚さ、人間愛、そして温かさがある。
すごく人間的なのだ。そういう愛をワインにも感じる。こだわって本当の意味で良いワインを
造っているのを感じることができる。

ワイナリーのサイトにあるサンクロディオのビデオ、クエルダ監督自身が立ち上げからの
ストーリーを語っている。
「ワインができあがって、スタッフの一人が、最低なワインだよ、と言った。私がナーバスに
なると余計魅力的な顔になるから、との冗談だった。」なんてコメントがあったり、信頼を置く
栽培家、醸造家やスタッフのサポートを受けサンクロディオを造る様子、クエルダ監督を中心に
和気あいあいと温かい人のつながりが感じられる。

同一人物が造りあげた映画とワイン、そんなマリアージュも時には楽しい!


【追記】
ワイン専門誌「ヴィノテーク」2010年9月号にてソムリエ、ワインタレント、料理評論家である
田崎真也氏のテイスティングコメントが載っているのでご紹介。

「Sanclodio 2008
色調はグリーンがかった淡いイエロー。香りは華やかでグレープフルーツやかりん、
メロン、ライチ—などの果実のコンポートや金木犀などの花の香りが調和。
ほのかにエストラゴンなどのハーブ香も。味わいはまろやかで柔らかい果実味から、
広がりはバランスが良い。アフターにフレッシュ感とミネラル感を残す。
マリアージュ : 白身魚のフリッターなど。」