カンガス - 辿り着いた理想郷 ドミニオ・デル・ウロガリョ

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こんな所にもこんな崇高なブドウ畑があるんだ。。

スペインってどんなに奥深いことか、まだまだ
まだまだ知らないことだらけだ、

そう思い知らされた土地、カンガス。










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アストゥリアス地方には DO はない。
Vinos de Calidad Cangas が1つあるのみ。
カンガスは南に位置する山を源流としカンタブリア海に注ぐナルセア川沿いの
谷間を形成する山間の産地。
スペインでは数少ない天然ものの鮭が釣れる川だそう。
生産者は 5 社、恐らく稼働している栽培面積は 100 haほど。
とにかく小さい。

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山脈が連なる生物圏保護自然公
園もある自然豊かなカンガスだ
けど、ことワイン造りに関して
は古くからワイン造りが行われ
てきたが、近年のクオリティの
歴史はほとんどと言っていいほ
どない。数社ある共同組合や、
中規模生産者も地元消費用ワイ
ンの大量生産が主。

そんなカンガスの名をワイン界
に驚きをもって知らしめた人物
がいる。


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ニコラス・マルコス。

ニコラスさんはトロ出身。
家族・親戚は代々トロやル
エダ、リベラ・デル・ドゥ
エロでワイナリーを経営、
ニコラスも 1995 年まで
携わり研鑽を積む。
でも次第に、自分の目指す
ワインがそこではできない
想いが強くなる。フランソ
ワ・リュルトンなどの優良
生産者の栽培責任者として
活躍したり、輸出責任者と
して世界のワインを知る
ようになり、カリフォルニアやフランスで収穫・醸造経験を積むにつれ、その
想いは強まるばかり。アラン・グライヨやドウロボーイズの 1 人クリスチャーノ・
ファン・ツェーラーとも親交が深い。
様々なクオリティワイン、自然派などの試みをしても納得がいかないニコラス。
そんなところ、カンガスの地を発掘。

あっという間に魅了されたニコラス。
全てを捨て、ここでワイン造りをすることを決断。
その理由は、

① カラスキン、ベルデホ・ティントなどこの土地以外のどこにもない土着
  品種が栽培されている。
② 修道院の何世紀もの間ワイン造り、ブドウ栽培をしてきた歴史ある土地。
③ 粘板岩、石英、無煙炭などが混ざった素晴らしい土壌
④ わずかでも樹齢100年以上の古樹が残っている
⑤ 冷涼な気候

ニコラスにとって数を造ることは重要じゃない。本当に良いワインを造る
ためなら急斜面の畑が多い、手作業にしか頼れない環境もなんのそのだ。

カンガスの山奥に生息するというライチョウ(Urogallo)から名前を取り、
ドミニオ・デル・ウロガリョと命名し、2009年に移り住み、2010 を初ビン
テージにワインを造りはじめる。
カンガス中を巡り、農家の人たちと交わり、発掘した畑たち。
一部は自社畑、一部は契約畑。
計 7.5 ha。ガリシア同様小農制により細分化された区画たち。

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共同組合が主なこのエリア、格付け Vino de Calidad の規制に縛られること
なく自由に自分の信じるワインを造ることをめざし、ドミニオ・デル・ウロガ
リョのワインはビノ・デ・メサ。

アストゥリアスにブドウ畑がほとんどないのはその雨の多さと冷涼さ。
しかし、内陸の山間にあるカンガスの地は、ミクロクリマが形成され、雨も多い
けど、ブドウが成熟するための夏の暑さ、太陽もあり、昼夜の温度差も大きい。
でもやはり冷涼な土地だからこそ、畑はほぼ全て南向きの斜面を選んだ。
ニコラスはリスクを冒してでもフェノールがちゃんと成熟すること、果梗が成熟し
木質化することを優先し、同産地の他農家より2週間 ~ 1 か月ほど遅く、10月
中旬頃から収穫する。

◯◯農法と画一したものにこだわるわけではなく、それぞれの土地に必要と思う
ことをする。硫黄、ボルドー液、プレパラシオン501番、504番など。
使用する硫黄は世界中ほとんどで使われている石油原料のものではなく、鉱山から
採った天然ものを使用。ボルドー液も銅の塊を購入し、自身で石灰と混合して
作ったものを使用。
「メンシアは還元しやすい品種で、初め、普通の硫黄を使用していたら、熟成中に
還元するワインが結構あった中で、天然の硫黄を使い始めたらおどろくほどその
還元傾向が軽減したんだ。」
全てが影響しているからこそ、全てにこだわる。

そしてニコラスが最も惚れ込んだ畑がラ・ソリーナ。

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カンガス・デル・ナルセアという村のすぐ北にあるコリアス村にある畑。
この村には 11 世紀からのコリアス修道院があり、ヨーロッパでも歴史ある
宗教的意義深い聖地として知られ、フランスからの僧侶も住んでいたそう。
20 世紀に入ってもフランスの僧侶が住んでおり、ワイン造りをしていたそう。

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このラ・ソリーナ畑はその修道
院の裏の斜面の 0.56 ha の畑
で、僧侶たちが斜面に石を組み
自根で植えたもの。
カラスキン種が主でベルデホ・
ティントやガルナッチャも混植
されている。平均樹齢 132 年。
標高 440~480m。

この畑に立った時、何ともいえ
ないスピリチュアルな雰囲気が
あり、鳥肌が立った。



こうした畑から現在スタンダードキュヴェのペシコ赤・白、 そして古樹の
アルビーリョ単一白ラス・ヨラス、高標高のベルデホ・ティント主体の 3 
区画からの赤レトルトイロ、ラ・ソリーナ畑単一区画のカラスキン主体赤
ラ・ソリーナの計 5 アイテムを造っている。 

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醸造所も造りもシンプル。
清潔感あふれる醸造所内。

手摘み収穫後、良質のブドウ
のみをステンレスタンク、も
しくは栗材のフードルに投入。
除梗する場合は除梗機で軽く
破砕。全房の場合は軽く足で
踏む。開放槽で天然酵母のみ
で発酵、軽くピジャージュ。
オーク樽や栗フードルで自然
に MLF, 寝かせる。
SO2 無添加。清澄、フィル
ターなし。 


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栗材のフードル。

昔から残る畑は混植が多く、
醸造も全品種まとめてする
のがこの地の伝統。
ニコラスさんは、区画、斜
面の高部、低部、品種と分
けて収穫・醸造していたけ
ど、結局全てがブレンドさ
れた時に素晴らしいバラン
スとなることから、先人の
智慧にならい、一緒に収穫
や醸造をすることも考えて
いくそう。

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 名称:Pésico tinto 2011
 品種:Mencía 40%, Verdejo Tinto 40%, 
           Carrasquín, Albarín Tinto
 産地:Vino de Mesa (Cangas del Narcea)
 生産者:Dominio del Urogallo

   ナルセア川沿いの複数の南向きの畑。
 標高 350~650m。
 平均樹齢 14、62年。

 除梗し、フレンチオーク樽(開放槽)でアルコール
 発酵、同樽および栗フードル(大容量)で10~12
 か月寝かせる。
 アストゥリアスとは思えない熟果実と共にメンソー
 ル、ユーカリのニュアンスも、石をなめたような
 ミネラル、嫌いじゃないざらざら感のあるタンニ
 ン、素晴らしい酸の存在。
 
 メンシアだけをバレルサンプルで試飲させてもらっ
 たけど、ビエルソのよりリベイラ・サクラなどの
 フローラルでフレッシュなスタイルに似る。

ベルデホ・ティントは、あの白ブドウ、ベルデホの亜種ではないとのこと。
特に古樹のブドウは、アストゥリアスの固有品種の中で最もピノに近い
薄めの色調で、赤果実が主、酸が穏やかでフローラルさ、フレッシュさがある。

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名称:Las Yolas 2011
品種:Albillo 100%
産地:Vino de Mesa (Cangas del Narcea)

ナルセア川沿いのテボンゴ、レトルトイロ、ラ・
ソリーナ、ボラカンなど複数の畑のアルビーリョ。
樹齢 62、120、130年。
手で除梗、足で軽く踏み、フレンチオーク樽
(300ℓ容量、2年目、開放槽)で発酵、同樽で
澱と共に 12 か月寝かせる。

ニコラスの奥様、海外営業担当フランさんの奥様が
どちらもヨランダさんで、2 人のヨランダさんも
このワイン造りに携わったことから、ヨランダの
ヨラを取って名付けた。

果実の凝縮度をすごく感じる。アルビーリョは結構
中性的なブドウだけど、黄桃など果実が豊かで、
かつ酸が素晴らしく、フレッシュでバランスが取れ
ていて非常に魅力的。


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  名称:La Zorrina 2011
      品種:Carrasquín 75~80%, 
               Verdejo Tinto, Garnacha etc. 
  産地:Vino de Mesa (Cangas del Narcea)
     生産者:Dominio del Urogallo

      標高 440~480 m の急斜面の畑ラ・ソリーナの混植
  畑の単一区画赤。
  全房で足で軽く踏み、大容量栗フードルで発酵。

  黒果実、山の植物、ミネラルなど複雑な香りに
  一本筋の通った酸、ストラクチャー、少し荒さの
  あるタンニン。
  でもバランス良くまとまっていて、素晴らしい
  冷涼さがあり、長熟のポテンシャルをすごく感じる。
 
  カラスキンは色素、酸、タンニンが非常に高く、
  長熟のポテンシャルが最もある土着品種。
  「若い時はじゃじゃ馬のように酸やタンニンが際立ち
  がちな難しい品種なんだ。」



ニコラスさんのワイン、SO 2無添加なのにこのクリーンさは何だろう。
ひねてないのは何だろう。
様々な醸造技術を経験したニコラスさんだからこそ、自然派であればあるほど
畑においても造りにおいても1つ1つの作業を非常に丁寧にする大事さを
知っている。
そして全てのワインに感じる果実の生命力。

今年は冬、春と雨が降り、5月以降はほとんど降らず、夏も暑く、昼夜の温度
差が大きく、フェノール類も一緒にゆっくり成熟し、小粒で健全なブドウに
育っている。この恵まれた年、ボルドー液も銅剤も使用せず、504 番と
乳清の散布のみだそう。

ニコラスさん、ヨランダさん夫妻.JPG


ニコラスと奥様のヨランダ。

アストゥリアスはシードラだけ
ではなく、素晴らしいワインが
できるポテンシャルがある所だ
ということを教えてくれた夫妻
だった。

カンガス、また行きたい!







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