ピラジン ‐ カベルネ系品種たち -

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科学的なことは文系の私にとっては理解するのとっても難しくちんぷんかんぷん
なのだけど、笑、ワインを深めるためには突っ込んでみるべきで。
ワインをもっと楽しむために。

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ドミニク・ルージュー氏。
7 年ほど前からスペインに住み、ガリシア、プリオ
ラート、トレドなどでワイン造りのコンサルをする
フランス人。
素晴らしいワインを造るだけでなく、ボルドーで長
年ワインを科学的な視点から深く研究し、今回の
テーマ「ピラジン」も 5 年間研究し博士号を持つ。
逝去されたワインの香りの世界的権威であるボル
ドー第二大学の富永敬俊博士とも交流が深く、富永
博士を非常に尊敬しているよ、とも言っていた。

そんな彼が話してくれた「ピラジン」。




★ ピラジンが多く含まれる品種って?
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  ・カベルネ・ソーヴィニヨン
  ・カベルネ・フラン
  ・ソーヴィニヨン・ブラン
  ・メルロ(時々)
  ・ベルデホ

★ ピラジンって?

 ここでは自然界に存在する
 メトキシピラジンを指す。

 
 上の品種に多く含まれるメトキシピラジンには少なく
 とも以下の 3 種類があることが分かっている。

 ① 2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン (IPMP)
 ② 2-メトキシ-3-sec-ブチルピラジン (sBMP)
 ③ 2-メトキシ-3-イソブチルピラジン (IBMP)

   いわゆる、青っぽい香り、土っぽい香りで 1~2 ng/L という超少量(オリンピック規格
 プールに砂を 2 粒落とすくらいの量!)で検知できる強い香りを持つそうだ。

 うち、重要なのは

 ① 2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン (IPMP)
 ③ 2-メトキシ-3-イソブチルピラジン (IBMP)

 の 2 つで

 ③ 2-メトキシ-3-イソブチルピラジン (IBMP) は

 青ピーマン、グリーンピース、ソラマメ、レタス、ホウレン草などに含まれる物質。
 そして、この IBMP は上の品種に感じられる青ピーマンの香りの元となる分子である
 ことが 1969 年オーストラリアの研究者によって解明された。
 
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そして、
 ① 2-メトキシ-3-イソプロ
  ピルピラジン (IPMP)は
 
 ③ よりも土臭いニュアンスを
 帯び、茹でたアスパラガス、
 茹でたアーティチョーク、
 茹でたソラマメ
 などの香りと言われる。

 メトキシピラジンは、冷涼な
 気候の下で栽培された果実や、
 生理的成熟に至る前の果実に
 多く含まれる一方、果実が成

 熟するに従いその濃度は減少する。
   
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だからこそ、冷涼なボルドーではこ
のピラジンに非常に気を遣い、タン
ニンがしっか成熟しないことに伴
いこのニュアンスは少しでもあると
欠陥と見なし、どこのシャトーもこ
れを避けるべく尽力し、そのため
ラジンの研究が非常に進んでいる。
だからブレンドをし、成熟レベルの
安定をブレンドすることで追及した
り、特に冷涼ピラジン含有量が高
い年などは熱処理をすることで 
IBMP を揮発させる、なんてことも
するそうだ。

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逆に、アルゼンチン、カリフォルニア、オース
ラリア、スペインなど地中海性気候の温暖な
産地では、ピラジンを感じるけど、タンニンも
成熟し丸くなっているので、そのバランスがあ
るためにある程度の量はピラジンも欠陥とはみ
なされない。
ピラジンはワインにエレガンスや冷たさを与え
とポジティブに見なすことも。

私も、この香り、嫌いじゃない。





★ ブドウに含まれる IBMP はどこからく来る?
  
 ・ブドウの中でも IBMP は果梗、次に果皮に多く含まれる。
 ・房だけでなく、葉にも含まれ、特に地面に近い樹の下部の葉がより多く含まれる。
  その葉のIBMPも師管を通じて房に伝わっていくのだそう!
 ・色づきの直前に IBMP は減少、その後、色づき ~ 収穫期の間に最も上昇する。
  収穫期までの 6 月末から 8 月末頃に雨が降ると IBMP 値が上昇する。

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★ IBMP の上昇を最低限に
        とどめる対策は?
  
 ・除葉、除梢などをすることで、
  ブドウの成熟を助け、IBMP 値
  が下がり、糖やフェノール類値
  を上昇させる。タイミングとし
  ては結実から房が完成する時期
  の間にすること。
  そうすると糖が上昇、収量と 
  IBMP 値は減少、とバランスの
  よいブドウになる。
  早すぎる除梢、色づき後の除葉
  は逆に IBMP が上昇し、青ピー
  マンのニュアンスが強いワインが
  できるリスクが高まる。
 ・醸造では、熱処理のみが IBMP 値を著しく下げる方法。
 ・結実から色づきの始めの間の気候条件がブドウに含まれる IBMP 値保有量の
  決め手になる!

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★ 植物系の香り

 刈ったばかりの芝生
 草のような
 カットしたアーティチョーク

 などの植物系のニュアンス

 これは
 ピラジンではない。


 これは C6 アルデヒドが元の香りで、ブドウの成熟レベルではなく、収穫後の除梗、破砕、
 プレスの程度などによって出てくるもの。アルデヒドは発酵の過程でアルコールに還元され
 C6 アルコールになり、アルデヒドと比べて 10~100 倍を香りにくく、ワインへ変換された
 後ではそれほど香らなくなるため、これら C6 化合物がワインに与える影響はピラジンほど
 大きくない。

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世界中のピラジンを多く含む品種を
メインにそうでないものも含め、
20 種類のワインを試飲。

ソーヴィニヨン・ブラン
ボルドー、南アフリカ、ニュージー
ランドなどを試飲、
南アフリカはピラジンではなく C6
っぽい草っぽさ、ニュージーランド
の一つには青っぽさ=メトキシピラ
ジンをすごく感じた。
「ニュージーランドのソーヴィニヨ
ン・ブランにはメトキシピラジン値
が高いが、それは冷涼さ、雨の多さ
や沿岸の湿度の高さ、などが関係
ているのだろう。」とドミニク氏。
そして、ボルドーの樽熟。
メトキシピラジンはパワフルな香りだけど、樽などの要素で簡単に隠れてしまうことも
わかった。

カベルネ・ソーヴィニヨン
オーストラリア、ハンガリー、チリ、ボルドー、ソノマ、スペイン
オーストラリアのイェロ―・テイルにかなりのメトキシピラジンを感じる。典型的な
カベルネを思わせ、ユーカリ、メンソール、などのニュアンス、チップを使用して
いるけど、味わいもバランス良く、イェロ―・テイルのコスパの高さには舌を巻く。
チリのもしっかり感じたが、果実味もあり、タンニンも丸く、メトキシピラジンが
ポジティブに感じられる。シャトー・オーゾンヌのサン・テステフ 2006 にメトキシ
ピラジンを少し感じた。

他に、メトキシピラジンと間違えそうなニュアンスを持つマルベックやコルヴィーナ
など比較することでより明確に感じることができた。

香りを知ること、そしてそれに出会った時に言葉で的確に表現すること、
その難しさ、楽しさを改めて感じたセミナーだった。

ドミニク夫妻はもうすぐカタルーニャからガリシアに移り住んで、ガリシアで
自分たちのワインを造るのだそうだ!
それもまた楽しみだ。

 


 



 

 


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コメント(3)

はじめまして。日向と申します。
ベルデホとメトキシピラジンで検索していたらこのブログに行き着きました。深く正確な内容にとても勉強になりました。

私のやっているワインブログでも紹介させていただきました。
今後ともよろしくお願いします。

日向さん、お返事が大変遅くなりまして本当に
すみませんでした。。
ご紹介いただいたとのこと、恐縮です。
日向さんのブログも拝読させていただきますね!
これからもどうぞよろしくお願い致します。

沼田と申します。
記事を読ませていただきました!とても勉強になる内容で感動しました!
香料の勉強をしているものなのですが…

『メトキシピラジンは、冷涼な気候の下で栽培された果実や、生理的成熟に至る前の果実に多く含まれる一方、果実が成熟するに従いその濃度は減少する。』

上の部分についてなんですが、この情報はどちらから得られた情報かを可能であれば教えていただきたいです。

よろしくお願い致します。

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