2012年6月アーカイブ

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最近の全国紙「エル・ムンド」に載っていた
「リベラ・デル・ドゥエロに魅了され居ついた
フランス人たち」

有名どころでは、
ステファン・ドゥルノンクール
ミシェル・ロラン
パスカル・デルベック
など、
でもそれだけでなく、フランスは言うまでもなく、世
界中でワイン造りの経験を積み、リベラ・デル・ドゥ
エロに辿り着き、留まることを決めたフランス人醸造
家が、この記事だけで 10 人紹介されている。


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「1990年代の頃はリベラ・デル・ドゥエロはまだまだ国際的に知られていない産地で
 その分自由にワイン造りができる寛容さがあったから。」

「リベラはフランスの銘醸地と同じレベル、もしくはそれ以上のクオリティのワインを
 産む環境が揃っている。粘土質・石灰質の混じり合った土壌、標高の高さ、極度の
 寒さと暑さの気候、地形により形成される様々なミクロクリマ、古樹の畑、ワイン
 造りの長い歴史など、グラン・ヴァンが産まれるのに必要な要素が揃い、素晴らしい
 長熟のポテンシャルのワインが出来得る。ドゥエロ河沿いにあるこの産地は世界
 最高水準の環境にある。」

なぜ、これだけのフランス人がこの土地に魅了されているのか、それは彼ら自身の
コメントに如実に表れている。

リベラ・デル・ドゥエロは 2000 年のワイン造りの歴史があり、世界的に知られる
スペインを代表する銘醸地とされるが、本当の意味でクオリティを追及する歴史は
以外と短い。19 世紀半ばに創業したベガ・シシリアは別として考えたい。
もともと、リベラ・デル・ドゥエロのブドウ栽培面積は今ほど多くなく、レモラチャ
(ビート)やジャガイモが多く植わっていたそうだ。ベガ・シシリアが創業し、農家から
ブドウを購入しはじめると、農家はジャガイモのかわりにブドウに植え替えたそうだ。
そして、1970 年にペスケラやプロトスが創業すると、その勢いは増し、更に畑が増え
1980 年代にはブドウ栽培農家は生産者として量を造り始める。
1990 年代国際的にリベラ産地が注目されるようになると、生産者数は一気に増え、
2000 年に入り投資家がワイン造りをし始め、生産者数は更に増え続けた。
しかし、そうした生産者の中には醸造技術をきちんと知らない人も少なくなかったそう。
ティント・フィノ(テンプラニーリョ)はリオハのテンプラニーリョと比べて果皮が
厚く更にボディがある特徴を持ち、すごいワインが造れる!ということで、樽を使い
過ぎたり、過剰な MLF をしたり、還元がすごかったり、そんなワインが造られた。
そんな中、少しずつリベラの素晴らしいポテンシャルのあるブドウを活かした本当に
良いワイン造りをしようとする海外で研鑽を積んだ若い醸造家や上のフランス人のような
外国人醸造家が、樽を使いすぎない果実味の豊かなスタイルのワインを造り始めている。

Pago de Los CapellanesAbadia Retuerta (DO に属してはいないが)、Vega Sicilia
現在リベラ・デル・ドゥエロには 255 の生産者がいるが、本当に素晴らしいワインを
造る生産者を挙げるとなると非常に限りがある。

アロンソ・デル・イェロ

一つの例だ。
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もともと製薬業に従事していたハビ
エル・アロンソ氏とマリア・デル・
イェロ夫妻が 2002 年に始めたプロ
ジェクト。マドリッド出身の彼らは
北に 200km 程の場所にあるリベラ
に魅了され、ワインを愛する彼らは
とにかく品質にとことんこだわる、
数より質をとことん大事にすること
を決め、着手。




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・ボルドーの著名醸造家ステファン・ドゥルノンクール
 氏をコンサルタントに迎え、リベラの土地の個性を最大
 限に引き出すワイン造りを追及
粘土質、石ころが多い、石灰質、砂質など様々な土壌が
 細分化され、標高の高い、ミクロクリマに恵まれた区画
 を探し、土壌微生物学の権威クロード・ブルギニョン氏
 に徹底的な土壌分析をしてもらい、購入
・トップキュヴェ「マリア」は良い年のみリリース
・低収量 3,000 ~ 5,000 kg/ha (DO 規定は 7,000 kg/ha)
・農薬は使用しない有機栽培、硫黄散布、堆肥のみ
・大きく 4 ブロックに分かれる畑を、また更に細分化し
 ブドウやできるワインのスタイルによって個別に醸造
・20 万本 ~ 500 万本と量を造る生産者が多いこの産地で
 自社畑のブドウのみでできる 70,000 本以上は絶対に
 造らない


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・カベルネ、メルロなどとブ
 レンドせず、ティント・
 フィノ 100 %で個性を引
 きだす

これまたボルドー育ちでボ
ルドー、アルゼンチン、カリ
フォルニアなどで研鑽を積み
2006 年から当ワイナリーで
栽培・醸造全てを任されてい
る醸造家リオネル・グルグさ
んが畑を案内してくれた。

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トップキュヴェ「マリア」用
の2区画のうちのひとつ
「El Circo」。
標高 837 mとリベラの畑の
中でも最も高い場所にあり、
西向きの緩やかな斜面の粘土
質・石灰質土壌。タンニン、
骨格を与えてくれ、もう一つ
の砂利の多い区画
「Violeta」
がエレガンス、ミネラル、フ
ローラルさを与える。

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リベラ・デル・ドゥエロの粘
質土壌は雨が降って乾いた後は
特に石のように硬く固まってし
まう特徴で、素晴らしいブドウ
が産まれる土壌ではあるが、そ
のあまりの硬さにブドウ樹の根
が地中に伸びるのを遮ったりし
てしまうマイナス点もあるため
当ワイナリーでは畝間に雑草を
生やしそれらの根で土中に隙間
や空気を入れるよう工夫してい
る。
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リベラ・デル・ドゥエロは西はバリャドリッドの東部から東はソリアの少し手前までの
150 km、北はアランダ・デ・ドゥエロ北部から南に 25 km ほどの所までの産地。
真ん中をドゥエロ河が横断し、それにほぼ沿うようにして国道 122 号線が通る。
大きく3エリアに分かれる。

① ペニャフィエルあたりまでの西部
  標高が低めでほとんどが河沿いの谷間になっている。土壌もより深く他エリアより
  肥沃な土地。
   生産者例 : Mauro, Aalto, Vega Sicilia, Dominio de Pingus, Pago de Carraovejas
② ロアを中心とするリベラ中央部
  標高が高くなり、緩やかな斜面や丘陵が広がり、斜面の上部には砂利を多く含む
  石灰質土壌、下部には粘土質・石灰質土壌で良質のブドウができる。
  Roa, La Horra, Anguix の 3 村をつなぐ三角地帯は良質のブドウが産まれる
  黄金地帯と評される。アロンソ・デル・イェロの畑もここにある。
          生産者例 : Viña Sastre, Pago de Capellanes, Alonso del Yerro
③ ソリア県に位置する東部
       ①②より緑がない砂漠的なエリアで、標高は少しだけ高く、より寒さ・暑さが厳しい
  リベラ・デル・ドゥエロは基本的に 1980 年代に植樹された比較的若い樹齢の樹が
  多いが、この東部には高樹齢の素晴らしいポテンシャルのあるブドウができる小さな
  区画がわずかに残っているという。
   生産者例 : Dominio de Atauta, Dominio de Atauta

生産者例を見ると最も名の知られた生産者が集中しているのは ① 西部のようだが、
多くの生産者が ② のエリアに畑を所有したり購入したりするケースが多いのも事実な
ようだ。
もちろん、全般的な傾向で、各エリアに特徴の異なる素晴らしい区画があるのだろうな。
気候は大陸性、雨が少なく、夏は非常に暑く冬は酷寒。昼夜の温度差が大きく、夏は
昼間 40 ℃まで上がっても夜は 8 ℃まで下がる。

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名称 : Alonso del Yerro 2009
品種 : Tinto fino 100%
産地 : DO Ribera del Duero

除梗・破砕せずステンレスタンクで発酵、抽出というよ
りは煎じる方法で醸造、優しくマセレーション、ルモン
タージュ。
フンチオーク樽で 12 か月熟成(新樽比率 20~25 %)

まだ紫がかり若さがあり、とてもフレッシュな赤果実、
キレイに溶け込んだ樽、トップキュヴェのマリアほどの
ストラクチャーはなくてもとてもバランス良く、複雑味
あり、今でも楽しめて長熟のポテンシャルがある。


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名称 : María   Alonso del Yerro 2009
品種 : Tinto fino 100%
産地 : DO Ribera del Duero

El Circo, Violeta の2区画のブドウを別々に木製バットで
醸造、フレンチオーク樽(新樽比率 60 %)で 18 か月熟成。
果実味豊か、フローラル、タンニンに厚みがあり、素晴ら
しいストラクチャー。石を舐めたようなミネラル感。

とにかくどちらも果実、樽、様々な香りのニュアンスに繊
細さがあり、それがバランスよく絡み合い、果実の凝縮感
と共に、冷涼さ、軽やかさがありしっかりと背骨を感じる。
樽使いが非常に上手。


マリアさんとライオネル(栽培、醸造責任者).JPG

マリアの 2007 ビンテージは彼ら
とって納得できる出来では
かったため未リリース。
近所の農家や生産者からは頭おかし
いのでは、ブドウ買って造ればいい
のに、と批判されたそうだけど、彼
らのこだわりの姿勢がよくわかる。

→ マリアさん(左)と
 リオネルさん(右)


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19 世紀半ばのフィロキセラ禍で
フランス人がスペイン北部にワ
インを求めてやって来、近代醸
造技術を伝えた。
それから 1 世紀、今度は必要性
からではなく、土地に魅了され
フランス人がやって来、ワイン
造りをしている。
その代表が

リベラ・デル・ドゥエロ

だ。