日本の雪国で育つブドウたち ② 岩の原葡萄園(新潟県上越市)

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                        (資料 :「食楽」誌 2011年4月号より)

 

「トンネルを抜けるとそこは雪国であった。」

 

雪国第二弾は我が故郷、新潟へ。

家族と旦那とで、私にとって10数年ぶりの新潟。

 

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夏だから雪など降る季節ではない

けれど、県境にある長いトンネルを

くぐり抜けて見えたのは、やはり

懐かしい緑豊かで水田がどこまでも

続く新潟の風景。

 

その故郷新潟に日本のワイン造りの

先駆者、川上善兵衛氏が創業したワ

イナリーがあることはワインエキス

パートの勉強の時に習っていて、国

産ワインのルーツに触れたくて、是

非訪問してみたかったのだ。

 

 

 

 

JR直江津駅から、車で30分ほど、または上杉謙信の居城春日山城跡から車で30分ほど、

頸木(くびき)平野を見渡す小高い丘に岩の原葡萄園がある。 

 

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まだ日本全国を見渡してもワイン造りに成功した所

など聞いたことがない1890年という昔に、川上

善兵衛氏は自らクワを持って自宅庭園を壊して

「岩の原葡萄園」と名付け、ブドウ栽培、ワイン

造りに取り組み始める。

 

目的は、

 

農民救済と殖産興業。

 

(←なかなかイケメンさんな善兵衛氏、笑)

 

 

米作りが盛んな新潟、今でこそ質量ともに日本一の米どころだが、明治のころには3年に

1度しかまともな収穫がないという収入が全く安定しない状況だったそうだ。

また、冬季の出稼ぎの必要もあったりと、大変な状況だった。

豪農の跡取りとして生まれ、7歳にして家督を継いだ善兵衛氏。 

その状況を少しでも良くしたいと真剣に考え、その手段として選んだのがワイン造りだった。

米の他にリスクヘッジで、痩せた土地でも栽培できるもの、そして、2mにも積もる豪雪地帯

(ワイナリーのある高田という地方は日本でも有数の豪雪地帯)であるこの土地に、雪にも

耐えやすいツル性の植物を、ということで、ブドウを選んだ。 

 

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「勝海舟を恩師として、視野を広げたい、元の

人を助けたい、その思いでワイン造りを始めた。

ワインが好きだったから、という訳ではなかったの

でしょう」と案内いただいたショップマネージャー

鋤柄(すきがら)さんが説明してくれる。

 

ワイナリーの方は尊敬と親しみを込めて

「善兵衛さん」

呼ぶ。

私もそう呼ばせていただく。

 

飽くなき探求心と情熱を持つ善兵衛さん、始めたら

「日本で海外のものに負けないワインを造る」と

いう野心を持って取り組んだそうだ。

 

彼の功績は今でも日本中に息づいているのだ。

 

善兵衛さんの功績は、日本で栽培し易く、ワイン造

りに適するブドウ品種の開発をしたこと、そして

長い歴史に基づくフランスなどヨーロッパの栽培・

醸造技術をいち早く取り入れ、日本のワイン造りの

礎を築いたこと。

 

1890年にブドウ畑を開き、欧米から300を超える

品種の苗木を欧米から取り寄せ、研究を重ねる。

始めはそうした品種を栽培し、ワインを醸造したが、「酸味が強すぎて飲むに耐えず」

だったそうだ。。失敗を繰り返しながらも、田んぼを切り売りして買い求めたワイン造りの

洋書を英語、フランス語を習得し、読み込んだそうだ。

本当にガッツがある人だったんだ。。

 

欧米そのままの品種を使うのでは、日本では良いワイン造りに限界があると感じた善兵衛さん、

1922年から品種改良の研究を始める。

 

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善兵衛さんがしたことは、アメリ

カ系品種と欧州系ワイン専用品種

を交配させることだった(フレン

チハイブリッド)。

欧州系ワイン専用品種は酒質は良

いが病害に弱く、栽培が難しく、

アメリカ系品種は病害に強く栽培

しやすいが、そのワインには独特

の癖(フォクシーフレイヴァー)

があることから、栽培しやすく、

しかもワインとしても優れている

品種を作り出そうと、自ら交配し

1万(!)に及ぶ交配種を育成。

その中から特に優れた22種を世に

出した。

その代表が

マスカット・ベーリーAと

ブラック・クイーン。

 

 

 

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現在、日本のブドウ品種別収穫量でマスカット・ベーリーA は第 4 位。

第 1 位は巨峰。実はこの巨峰も、善兵衛さんがアメリカから初輸入したキャンベル・アーリーの

4 倍体品種石原早生とセンテニアルの掛け合わせだそうで、巨峰も善兵衛さんの働きによって

生まれた品種なのだ。現在日本で収穫されるブドウの約 6 割に善兵衛さんが関わりをもつという

から彼の功績がいかに大きいかがわかる。 

 

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善兵衛さんの功績は他にもあって。

 

醸造用に石蔵を建て、裏手の雪溜まりから冷気を

引き込む隧道(すいどう)をつけた。

第二号の石蔵(明治31年建設)には雪室(ゆきむ

ろ)を設置し、貯蔵した雪で発酵温度を低く抑え

る工夫を凝らした。

発酵用の樽の周りに雪を置いて樽を冷やすことも

していたそうだ。

 

1970 年代に普及しだした低温発酵の原理を善兵衛さ

んは 70 年以上も前に実践していたのだ!

 

二つの石蔵は今も使われており、雪室の冷気によっ

空調が施されている。

 

 

 

 

 

 

 

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120 年もの長い歴史を感じる

石蔵で眠るワインたち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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自社畑は6 ~ 9 ha。上級キュヴェ

用のブドウを主に栽培。

スパークリングや白に使われる

ローズ・シオターという善兵衛さ

んが開発した品種などは、岩の原

葡萄園と他一か所、日本でたった

 2 か所でしか栽培されていない

品種だという。

 

マスカット・ベーリーAがたわわに

実をつけていた。

 

 

 

 

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試飲させていただいた 7 本

 

① 深雪花(みゆきばな) 白 ノンヴィン

② 深雪花(みゆきばな) ロゼ ノンヴィン

  ③ マスカット・ベーリー A  2009

④ 深雪花(みゆきばな) 赤 ノンヴィン

⑤   ヘリテイジ 2009

⑥   ブラック・クイーン 2009

⑦   レッド・ミルレンニューム 2010

 

 

(← ご案内いただいた鋤柄さんも善兵衛さん

  同様男前だ、笑

  本当にご丁寧に見せて下さり、とても

  勉強になりました。お礼申し上げます。

  お取り計らいいただいた新井さんにも

  深謝です!)

 

 

 

 

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名称マスカット・ベーリーA 2009

品種 : Muscat Bailey A 100%
産地 : 新潟県上越市高田
生産者 : 岩の原葡萄園

 

アメリカ系のベーリーと欧州系のマスカット・ハンブルグの

交配品種。比較的樹勢の強い品種だそうで、棚造りの畑も背が

とても高く、作業に脚立が必要とのこと。 

2007年から有機栽培に転換を始め、2010JAS 認証取得。

野生酵母のみで醸造。1年ほど樽熟。

  

酸が残るのが特徴的な品種。ほんとにそうで。

でも円やかさがあって。心地よい苦味もある品種。

しっかりとした骨格のあるワイン。

タンニンの穏やかさ。北の赤らしい清涼な酸がある。

 

まだ閉じこもっている感じで。ポテンシャルを感じる。

 

製造技師長の上村さんのコメント

「簡単に花開かない、雪国らしいマスカット・ベーリーA

あってもいいんじゃないかと思っています」。

(「食楽」 20114月号より) 

 

 

 

「岩の原葡萄園は、凝縮感の高さより、繊細でスッキリしたスタイルのワイン造りを

目指しています。」と鋤柄さん。

  

全体的にどのワインもミネラリーさが感じられ、清涼感があって端正な印象。

 

 

DSC_0110.JPG日本に適した品種を求めて、日本の風土とワインを早くから真剣に見つめて奮闘した若者、

川上善兵衛さん。

 

親戚の家で懐かしい再会に感激し、新潟の人々の温かさを感じた後だっただけに、そんな

新潟の人々が地元を大事に、この厳しい雪国で、その土地の風土を大事に造るワインは身に

沁みたし、善兵衛さんが新潟弁でブドウについて熱く語っていた情景が目に浮かぶようで、

親しみが沸く。

 

故郷(ふるさと)とはそういうものだ。

 

懐かしくて、自分が行った幼稚園や小学校を見て回った。

色んな思い出が次から次へと頭をよぎる。

自分が住んでいた社宅はもう跡形もなく、周りに広々とあった水田は姿を消しモダンな

住宅街に変わっていたり、大きなお店がたくさんできていたり、昔の面影を思い出すも

のはほとんどなかったけど、でも、ふるさとは色あせずにそこにあった。

 

うちは転勤族で新潟には 8 歳くらいまでしかいず、記憶も怪しい所はたくさんあるのだ

けど、それでも、自分が生まれて幼少期を過ごした場所は、特別な思いがあることは確かで。

それがどんなに幸せなことか。

 

どんなに長い間離れていても、ふるさとはそこにいて優しく迎え入れてくれる。

 

震災の被災地を思う。

 

DSC02255.JPG母は時々、ぐさっと心に突き刺さる

ことを言う。

 

「(生まれ育った)新潟に来るとね

(亡くなった)両親に会える気が

するのよ。」

 

人間はいつか死ぬもの。自分も母と

同じ立場になる日が必ず来ることに

心構えているべきなのだろうけど、

とにかく両親の健康を祈って今は考

えないことに。

母が生まれ育った信濃川沿いにある

お地蔵さんにお参りしながらそんな

ことを思ったり。

 

 

 

 

fotosfamilia.jpg田舎の料理はほんとに美味しくて。親戚はとても温かくて。

 

 

iwamuro.jpgその夜一泊した岩室温泉。

父が新潟勤務時代に知っていて連れていってくれた宿、高島屋

素晴らしい宿で。身も心も満たされ。

 

国産ワインのルーツに触れる旅、自分のルーツに触れる旅、

訪れることができたこと、本当に感謝。

   

 

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コメント(2)

素敵なレポートだわ♪
ぶどうのルーツ、ワインのルーツ、ゆーこちゃんのルーツ。
心に沁みました!

>Ryokoちん、ありがとよ~。読んでくれて。
一生懸命書いた!笑。
ワインはいいねぇ~、ふるさとはいいねぇ~。

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