プリオラートのこれからを実感 -エスパイ・プリオラート-

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DSC01015.JPGDOQ プリオラートとスペインを代

表する世界的なワイン評論家カルロ

ス・デルガド氏が主宰する初めての

国際的なプリオラートのワインイベ

ントが 52324日の2日間実施

れた。

プリオラートを代表するワイナリー

46 社が出展して。

現在プリオラートには 92 ワイナ

リーがあるそうなので、その半分が

集結したことになる。

 

90年代、いわゆる「4人組(5人組

とも)」の牽引により起こったプリ

オラートの一次改革から20年、今、

プリオラートは第二の改革期に入っ

ていると思っていて、そのタイミン

グでこのイベントに参加させていた

だけるのはすごく意義深く幸運だった!

自分なりの目的はそのワインの変化を改めて感じることと、去年スペインで初めてプリオラートで

認定された村カテゴリー(いわゆる村AOCのような)の特徴の違いがどこまで明らかになっている

のかなどが少しでも学べれば、だった。

 

DSC01012.JPG 

試飲会は1日目、DOQ プリオラー

トの本部が在するトロジャ村の歴史

ある建物Cal Compta

そして2日目はプリオラートのワイ

ン造りの原点ともいえるエスカラ・

デイ村の2か所で行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DSC01016.JPGエスカラ・デイ

 

この村にはサンタ・マリア・デ・エ

スカラ・デイというカルトゥジオ修

道院がある。もちろんワイン造り自

体はローマ時代、古代ギリシャの時

代から始まっているけど、どこの

ヨーロッパ諸国でもそうであるよう

に、ここでも修道士たちがワイン造

りを発展させたと言っていい。

カルトゥジオ会はシャルトルーズ会

と同義で、スペインではカルトゥジ

オ会という。

11世紀に、フランス南東部グルノー

ルのシャルトルーズという地で始

まった修道会で、12世紀にその

道士たちがプリオラートの地に修道

院を建て、修道生活を始めた際に、

醸造所も造り、ブドウを植え、ワイン造りを始めたのだ。

 

DSC01018.JPGこの歴史は、実はとても重要。プリオラートの主要

品種がなぜガルナッチャやカリニェナなのか、それ

は、シャルトルーズというローヌ地方の修道士達が

持ち込んだとすると合点がいく。

そしてプリオラートという名前もエスカラ・デイ・

カルトゥジオ修道院の修道院長(prior)の領土で

あることからつけられた。

 

19世紀には修道士たちはこの地を出ていき、修道

院は廃墟と化し、そして19世紀末のフィロキセラ

禍でブドウ栽培は廃れ、新たな復活は1980年代の

4人組の台頭を待つことになる。

 

栽培・醸造の全てを見直し、この土地のポテン

シャルを見出し、クオリティワインを造り始めた

ルネ・バルビエ、アルバロ・パラシオス、ホセ・

ルイス・ぺレス、カルラス・パスとラーナたちは、

古い樹齢のガルナッチャ、カリニェナの他に、

ベルネ・ソーヴィニヨンやシラー、メルロを

植え、それをブレンドしワインを造っていた。

彼らがやって来た当時は、ブドウ栽培も衰退して

いた頃で、放置された畑も多く、ガルナッチャや

カリニェナのポテンシャルも十分に見出せること

ができなかったのはしょうがないことだったの

だと思う。

 

FINCA_LES_TOSSES_DE_TORROJA_DEL_PRIORAT.jpg

こうした山間の急斜面の畑ばか

りのプリオラート。

機械化は不可能、全てロバや

作業が必要な厳しい環境。

そんな土地を開拓し、クロス・

モガドール、マス・マルティ

ネット、レルミータ、フィン

カ・ドフィ、など彼らの偉大な

ワインの貢献で、そしてパー

カー氏が高く評価したことで、

プリオラートが一気に世界的に

知られるようになったのは言う

までもない。

 

 

 

それから20年。

 

30代、40代の若い世代を中心に新たな改革が起こりつつある。

 

1次改革では、アルコール度の高い、濃い、でもエレガンスのあるスタイル、通常カベルネや

シラー、メルロなどを少しブレンド。

2次改革では、この土地本来の品種、ガルナッチャ、カリニェナのみを使い、アルコール度

押さえ、抽出し過ぎず、緻密でエレガント、でも土地やブドウの個性を表現するスタイル。

 

そんな風に変わってきつつあるのを感じる。

 

そして、山間のミクロクリマに恵まれたプリオラートの土地で村ごとに区分し、それぞれの

地区がどんな特徴で、どんな気候で、どんなワインのスタイルになるのか、という研究が

10年前から始まっており、去年村カテゴリーが認定された。

 

試飲会では、1次改革、2次改革、異なる村、色んなプリオラートが入り混じっているのを

見ることができた。

 

SubzonasPriorat.jpg村カテゴリーは「Vi de Vila」とい

う名で、12に分けられている。

村といっても行政区画による区画

ではなく、畑による区画。

それぞれの畑の歴史や環境を調査し

どの村カテゴリーに区分されるかを

細かく決めたそうだ。

その村カテゴリーで採れるブドウ

(区画は複数でも可)のみで造った

ワインにその村カテゴリーを名乗る

ことができる。

例えばポレラ村なら

Vi de Vila de Porrera」と。

 

なので、色んな村カテゴリーに畑を

所有するワイナリーの場合は、ワイ

ナリーの所在地だけでワインのスタ

イルを想像することはできない、

ということ。

今は呼称が認定されたばかり、

Vi de Vila」を名乗るワインはま

だ少ないけど、将来的にはブルゴー

ニュのように、一つの造り手から

様々な村カテゴリーを名乗るワイ

ンが出るようになるのだろうか。

とにもかくにも、100年近い年月を

けて確立されてきたブルゴー

ニュの格付けのように、プリオラー

トもまだまだ確立するには時間を

                              要することなのだ。

 

 

DSC00969.JPG名称 : Ferrer Bobet Selecció Especial 2008

品種 : Cariñena 95%

         Garnacha 5%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Ferrer Bobet 

 

ポレラ村のワイナリー。

2次改革の先駆け的存在の造り手。

製薬会社オーナーのセルジ・フェ

レールとトーレスで16年以上醸造

責任者をしてきたラウル・ボベが

造る。

近代的な醸造施設だけど、できる

だけ手を加えない、伝統的なブド

ウ栽培手法を用いワインを造る。

ブドウ本来の純粋さを引き出し、

樽を使いすぎず、素晴らしいポテ

シャルのワインを造る。

 

ポレラ村はプリオラートの南東部で、プリオラートで最も冷涼地区の一つ。

プリオラートで唯一栽培されている品種のほとんどがカリニェナ。

その他、メルロ、シラーなども冷涼な土地のため、適植されている。

昼夜の温度差が大きく、冬は非常に厳しい。土壌はスレート状。

南西部に位置するグラタリョプス村と直線距離にすると89 kmほどだけど、収穫期は

2週間も遅いなど違いがある。

他の地域からは周囲を山で遮られていて、谷間になっている。

地中海性気候。海からの湿気のある爽やかな風「Garvinada」が吹き入れる。

標高400500m。

 

ferrer_bobet_vinya_2.jpgこのワインができるブドウ畑の風景。

ちょうど春の剪定期で、不要に伸びた枝を適宜カットしていた。

スレート状の土壌がよくわかる。

 

ferrer_bobet_vinya.jpgゴブレで、古い樹齢、一本一本手作業で。

急斜面でつくづく大変な作業だ。。

房の白い粒々がブドウの花。

 

DSC00995.JPG同じくポレラ村のワイナリー

シムス・デ・ポレラ。

 

4人組の一人ホセ・ルイス・

ぺレスの息子アドリアが

中心になって造る。

 

アドリアと従兄マルクが共に

造る新しい赤

Les Cousins

は新鮮で軽やかで果実味

溢れる良いワインたちだった。

 

Fredi.jpg名称 : Planassos 2008

品種 : Cariñena 100%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Saó del Coster

 

フランス育ちのスペイン人フレディ・トーレスが造るトップキュヴェのカリニェナ100%。

彼も2次改革を牽引する若者の一人。

 

プリオラートの南西部に位置するグラタリョプス村のワイン。

プリオラートは東西北を山で囲まれ、唯一南が開けている。そこに流れるエブロ川からの

影響を受ける。標高200400mほど。

地中海性というよりは、内陸の気候もあり、昼夜の温度差が大きい。

プリオラートの中では温暖な気候。

 

同じ村のワインと比べると彼のワインは驚くほど冷たさ、軽やかさ、緻密さを持つ。

 

同じ村の師匠たち

 

rene.jpgルネ・バルビエのクロス・モガドール

 

名称 : Clos Mogador 2008

品種 : Garnacha 46%, Cariñena 21%, Cabernet Sauvignon 19%, Syrah 14%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Clos Mogador

 

DSC01090.JPG

 

19891995年を飲ませていた

だく貴重な機会があったけど、

素晴らしかった。。。

 

まだ全然イキイキしていて、ま

だまだキレイに長熟していきそ

うな素晴らしいポテンシャル。

 

長老ルネさん、さすがです。。

 

 

 

 

 

 

 

albaro.jpgアルバロ・パラシオスのレルミタ

 

名称 : L'Ermita 2010 (バレルサンプル)

品種 : Garnacha 90%, Cariñena 9%, Garnacha Blanca 1%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Albaro Palacios

 

彼らのワインもビンテージを追うごとに外来品種の比率を減らし、少しずつ、固有品種で

あるガルナッチャやカリニェナにウェイトが置かれつつあるのだ。

 

DSC01009.JPG

そして、同じグラタリョプス村の

 

名称 : Closa Batllet blanc 2008

品種 : Escanyavelles 60%

         Garnacha Blanca 40%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Closa Batllet

 

スレート状の畑の樹齢100年以上のエスカニャベー

リャス種。ガルナッチャ、カリニェナが12世紀に

植えられた前からプリオラートに固有品種として

栽培されていた品種が白も黒も10数種類あったこ

とがわかっているのだそうだ。

エスカニャベーリャスはその一つ。

このブドウを主要品種として造る白は今のところ

これが唯一。

とても興味深い。

 

 

 

 

DSC01005.JPGプリオラート最も古いワイナ

リー、エスカラ・デイ。

 

カルトゥジオ修道士たちがワ

ン造りをしていた修道院傍の醸

造所を使い 17 世紀に創業、

1840年に醸造所を購入しプリ

オラートで初めてボトルワイン

を造り始めた。

ワインスタイルは伝統的なアル

コール度が高く重いワインだけ

ど、2年前から醸造を任されて

いる注目若手醸造家のリカルド

が、少しずつスタイルを変えて

きているのが感じられた。

 

 

 

エスカラ・デイは、プリオラートの北東部。すぐ西にモンサン山系がそびえ、畑は標高

500m から高い所では 800 mとプリオラートで最も高い。

岩山にすぐ近い場所のためスレート状より粘土質の土壌が多く、ガルナッチャに向くという。

大陸性の気候に近く、昼夜の温度差が大きい。

南部でも醸造経験を持つリカルドは「プリオラート南部の土地は日照量が多く、ガルナッ

チャは焼けた感じ、熱さを感じるワインになりがちで、それほど魅力を感じていなかった

けど、エスカラ・デイは全然違う。素晴らしいポテンシャル。」と。

 

彼が試験的に造り始めた標高800mのガルナッチャ100%の赤、バレルサンプルを試飲させ

てくれたけど、このワイナリーのこれからが楽しみと感じられるものだった。

 

terroir.jpgテロワール・アル・リミット

トロジャ村の造り手。プリオラートのちょうど真ん中に位置する村。

南東部のグラタリョプス村と直線距離にして4 kmほどしかないけど、ミクロクリマで環境が

全く異なり、より冷涼、標高も600700 mと高めで、収穫時期も3週間くらい変わってくる。

また、テロワール・アル・リミットでは、通常より少し早めに収穫しアルコール度を上げず、

抽出し過ぎず、バリックは一切使わず、古いフードルで熟成。

造り手は南アフリカのイーベン・セイディとドイツ人のドミニク・フーバー。

 

名称 : Les Tosses 2008

品種 : Cariñena 100%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Terroir al Limit

 

DSC00991.JPGレス・トッセスの畑。

北向きの急斜面。カリニェナ。

地中海性気候の影響があるプリ

オラートでは夏の酷暑に耐え、

スレート状の土壌に適する品種

はカリニェナと考える二人。

ガルナッチャは、本来、より冷

涼な地域が合うためプリオラー

トの中で標高の最も高い石英・

石灰・粘土質の畑の古い樹齢の

ブドウで造る。

どのワインも素晴らしく、彼ら

のワインスタイルはまだまだ異

端児的な存在ではあるけど、こ

れからのプリオラートがどんど

ん面白くなっていく最も良い例

なのだと感じる。

 

DSC01003.JPGトリオ・インフェルナルもトロジャ

村の造り手。

フランス、ローヌやプロヴァンスの

醸造家3人ローレン・コンビエ、

ピーター・フィッシャー、ジャン・

ミシェル・ジェランがプリオラート

という素晴らしい土地に魅了され、

ワイン造りを開始したボデガ。

名称 : Riu 2009

品種 : Cariñena 45%

         Garnacha 45%

         Syrah 10%
産地
: DOQ Priorat
生産者 : Trio Infernal

 

栽培・醸造を任されているペップ

(写真)とパトリシオの2人の

これからも楽しみだ。

 

いろいろ見たけど、プリオラートは本当にこれから。

造り手ごとにスタイルは様々、同じ村でも全然違うスタイルがありそれぞれの村カテゴリーの

特徴を突き詰める研究、調査もまだ不足。古きと新しきで様々な葛藤もある。

でも、このプリオラートという土地は、より良い産地として確実に歩みを進めていることを

実感できたイベントだった。

 

DSC00946.JPG

最後に、プリオラートとは全く関係

ないのだけど、

 

ちょうどこのワインイベント直前の

週末、旦那と中心地を散策してたら

いたいた、デモの人たち。

カタルーニャ広場中座り込みで。
すっごい圧巻だった。
感情揺さぶられた。
スペイン中の数都市で若者が遂に

立ち上がったって感じ。
スペインの社会システムは EU 他国

と比べても、物価と給与レベルの

ランスが全然取れてないし、教育・

医療は予算カットとか、社会システ

ム自体が庶民に良い方向に機能して

いない。
ユーロに替わってから悪い方向に行き続けるスペイン。
不況が本当に深刻だってこと感じたし、でも若者たちが声を上げて立ち上がった、

それも暴力に訴えず、その行為にはすごく頼もしさを感じた。
スペインはどこへ行くのか。


 

DSC00950.JPG

その後、久々に散歩したゴティコ地区の黄昏時。
すごく良かった!

やっぱりゴティコの雰囲気好きだなぁ。
金曜日ってこともあって、どこも人でごったが

えし、どこのお店も大忙し、楽しそうに飲んで

食ってしてる。

観光客もたっくさんで、ほんと幸せそう。

その前に見たデモの光景と対照的で、なんだか

感慨深かった。

 

このデモ、バルセロナ旧市街の雰囲気、プリオ

ラートの情熱、美味しいワインたち、、

この週はエネルギー、たくさんもらった!

 

 

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コメント(2)

実家のミカン畑のような感じだなぁ~。
急斜面に木を植えているのですべて手作業でしたよ。
木で出来る農産物は、ほんと手作業が多く手間ですものね。

小さい頃、夏休み中に畑仕事を手伝わされて、ぶーぶー言っていたのを思い出します。

それにしても、いいなぁこんな試飲会に参加したいですよ。
正にrising Spainですね。

>眠狂四郎さんのご実家のミカン畑、こんな感じなのですね~。
大変な作業ですよね。。
こういう環境でも敢えて取り組み、本当に良いものを造ろう
という意気込み、頭が下がります。。
それはブドウでもミカンでも同じですよね。
逆に小さい頃、狂四郎さんのような体験してみたかったですよ、笑。
いつか、スペインでのこういう試飲会ご一緒できたらいいですね!

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