ペネデスの新進気鋭のワイナリー MAS CANDI

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今回は少し本気に(?) ワイナリーを紹介。
ちょっと長くなるし、うだうだ細かい話になるので、ご了承のほどを。
でも、それだけ、感動をもらって、大好きになって、どうしても応援したいと思えるワイナリーなのだ。
先日(08年6月6日ブログ参照 http://vinonoshabla.blog117.fc2.com/blog-entry-55.html)の
チャレロ試飲会で出会い、7月29日にワイナリーを訪ねた。

「僕らはワイン生産者である前に、農民だ。」
Medio Penedèsにあたる、ペネデスの中心地Sant Sadruní d’AnoiaとVillafranca del Penedèsの間に
位置するMAS CANDÍ。2006年創業、2006年が初ヴィンテージという、まだ真新しいワイナリー。
でも、ワイン用ブドウ栽培にかけてはプロ中のプロ。ペネデス中の土壌、環境を知り尽くし、栽培方法に
こだわりを持つ。

celler2 002[1]
モンセラット山を背にワイナリーが見える。

共同経営のラモンさんとトニさん。二人のご家族は何代にも渡ってブドウ栽培を生業としてきたのだそう。
15歳の時にワイン醸造を学んでいた頃、二人は出会う。その後、ブルゴーニュやシャンパーニュで経験を
積み、夢である自分達の土地でワイナリーを創業。
私の「あなたたちはエノロジストなの?」という問いに、「ぼくたちはワイン醸造のプロである前に、ブドウ
作りのプロ=農民だ」と答えた彼ら。まだ始めたばかりのワイン醸造、61haほどのブドウ畑のうち、60haの
ブドウは大手ワイナリーに納入し、残りの1haは自社ワインに使う。

伝統にこそ良いものがある。現地回帰への信望。
Mandó, Mònica, Sumoll, Torbat, Malvasia de Sitges, Cannonau, Roigenc ......
もともとペネデスのあるカタルーニャでは、こうした固有品種が栽培され、ワイン醸造が行われていたが、
その品種の栽培の難しさ、代わってカベルネ・ソーヴィニョン、シャルドネなどの外来品種がこの土地で
適合したこと、それらの栽培の容易さ、市場のニーズ、などから古くからある固有品種がとって替わられ、
今ではカバに使われる3品種(チャレロ、パレヤーダ、マカベオ)以外は、ほとんど外来品種が栽培され
ている。その古い固有品種を復活させたい!ワインに最大の個性を出せるのは伝統的にその土地に
あるブドウからだ。そう信じてチャレロの栽培をメインに、同時に広い実験畑でMandó, Mònica, Sumoll,
Garnacha Blancaなどを栽培している。

カタルーニャの伝統的固有品種を復活させたい、その思いでカタルーニャ中を巡る二人。Mandó種は
北部アンポルダの農家の知り合いから、わずかに残っていた畑から譲ってもらい、実験を行っている。

MasCandi300708 012 Xarello
Mandó種の実験畑

MasCandi300708 010 Mildiu Garnacha Blanca
ガルナチャ・ブランカ種は栽培が難しい品種。6,7月の雨でべと病が発生。
べと病に最も弱い品種はガルナッチャ・ブランカだそう。

自然を尊重した栽培・ワイン造り
彼らの畑を見てまず驚くのが、周辺の畑との明らかな違い。

化学肥料を使わないのはもちろんのこと、できるだけ雑草は抜かない、林で何の肥料をまかなくても、
自然の力で力強く育つ木や植物たちのように、自然を尊重して野生の状態でブドウを栽培することが
ベストな状態だと考える。

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除葉もできるだけ行わず、最大限の光合成ができるようにしている。
また、ブドウの果皮が太陽に当たりすぎて日焼けするのを防いでいる。

MasCandi300708 017 Xarello
樹齢40〜50年のチャレロ種。順調に実ってきている。

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向こう側は機械収穫の他社の畑。手前が100%手摘みのMas Candi。

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自社ワイン用の畑は全て南向き。一部は緩やかな斜面に。
モンセラット山に程近いこの地域は、遠い昔、海の底だった。そのため、砂利が多く、石灰質の土壌。
ブドウ樹の樹勢が強いと、ブドウの実がなりすぎたり、大きくなったりしてしまう。ブドウ樹になる房が
多ければ多いほど、土壌からの要素は分散されてしまう。実が大きければ大きいほど果皮に含まれる
色素と香りが抽出されにくい。雑草などを抜かずに自然の状態にすることで、ブドウ樹の樹勢があまり
強くならないようバランスを取っている。

自社ワイン用には全て手摘み。15kg収容の小さい箱で収穫。畑と醸造所が目と鼻の先にあり、輸送
中のブドウのダメージも最小限に抑える。

今年、ペネデスでは降るべき冬季に雨が降らず、降らないべき6、7月に大雨が続き、mildiu(べと病)
が襲い、多くの畑にダメージを与えているのだそうだ。そんな中、彼らの畑は、自然と共存するブドウ
栽培方法により、ブドウがたくましく育っており、ダメージは最小限に抑えられた。

実際にべと病にやられた葉を見せてもらった。褐色の斑点がある。
べと病や雨後の高湿度に対抗するため、銅剤を撒布する。撒布する量も最小限に。
隣の他社の畑との違いがはっきり見てとれた。

MasCandi300708 020
写真では少しわかりにくいが、向こう側が他社の畑。手前がMas Candi。
他社畑のほうが、銅剤の青色が葉に色濃く残っている。

MasCandi300708 045
Mas Candiのラインアップ。
左から
「Sol + Sòl  カベルネ・ソーヴィニョン 100%」
「Ovella Negra  ガルナチャ・ブランカ 100%」
「Desig  チャレロ 100%」
「QX  チャレロ 100%」
「Mas Candi カバ ブリュット ナトゥーレ」

Sol + Sòl
2006年が初ヴィンテージ。赤。カベルネ・ソーヴィニョン 100%。外来品種ではあるが、長年
栽培してきたブドウが素晴らしい出来栄えだったため、造ったという。彼らの畑の隣には、最適地と
いうことで、スペインで初めてカベルネ種を栽培し始めたJean Leon社の畑がある。

まだ樽熟が完成していない2007年ヴィンテージを少し頂いた。
熟果実の芳香、とても肉づきのよい丸い味わい、とてもエレガントに仕上がっている。
これは市場に出るのがとても楽しみだ。実験的に栽培していたMandóのクオリティが
良好のため、将来的にはこのカベルネに少しマンド—をブレンドしたいという。
「Sol + Sòl 太陽 + 土」、良いワインは良いテロワールから、のコンセプトがしっかり感じられる名前。

Ovella Negra
まだ市場に出ていない。2007年が初ヴィンテージ。ガルナチャ・ブランカ100%。
「Ovella Negra (黒い羊)」は「(家族・集団の)はみ出し者」という意味がある。まずその名前から
赤ワインかと想像させるが、実は白、という遊び感覚を取り入れ、またガルナチャ・ブランカは、
とても困難な品種で、様々な苦労をさせられたことから、愛着を込めてそう名付けた。
できたばかりのガスが少し感じられ、心地よい酸味が前面に、でもトロピカルフルーツのフルーティ
さもあり、口中に広がる味わいの豊かさがとても気に入った。

Desig
チャレロ100%。2007年が初ヴィンテージ。Desigはカタラン語で「希望」を意味する。自分たちの
ワインを造るという夢を初めて叶えたのがこの白。彼らの更なる夢を希望に乗せて。。
香りがあまりたたないチャレロ種、でもこの白はすごい、バナナのような、トロピカルフルーツの
香りが芳しく、しっかりコクがあって、味わい深く、爽やかな白に仕上がっている。全ての工程に
おけるひとつひとつのこだわりがあるからこそ、の出来なんだと感じる。

QX
収穫・選果後は3,4℃の低温でブドウを保管、軽く優しく破砕し、スキンコンタクト24時間。圧搾し、
フリーランジュースのみを使用。4000kgのブドウから2000lほどを搾る。フィルターにはかけず、槽の
下に沈んだ不純物を除く。自然酵母を使い発酵。
フルーティな香気成分を出すために、発酵温度は17〜25℃。
QXとは「Quatre Xarel・lo(4種のチャレロ)」の意。 栗、アカシア、フレンチオーク、アメリカンオークの
4種の樽でそれぞれチャレロを発酵、8ヶ月熟成し、ブレンドをする。

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4種の樽。

昔、まだステンレスなどが存在しなかった頃、発酵・保存・熟成など様々な用途に栗の樽が使われて
いたという。栗の木材は、オークほど木の味わいをワインに与えず優しいのだそうだ。ここでも、彼らの
伝統を大事にする姿勢がうかがえる。

どれも、地中海を感じるとても温かいワインだ。

2007年ヴィンテージで、フレンチオーク樽ひとつだけ初めて造っているというマンドー100%。

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樽熟1年近くが経過した時点、樽から試飲させていただいた。まだ完成状態ではないこのマンドー。
でも、美味しい。。黒スグリ系の熟果実、樽熟でタンニンも滑らかになってきている感じ、深い味わい。
これが初ヴィンテージなのか、レベル高いなぁ。2週間前に試飲した時よりも確実に変わっている、との
ラモンさんのコメント。

ワイン、カバ合わせて35,000本/年を最大量とし、自分たちで全てできる量以上は造らず、品質に
こだわる姿勢を持つ。自分たちで全てできる量以上は造らない。

「完璧なワイン」は不完全
ワイン・ジャーナリズムが広く消費者の支持を集めるようになり、高く評価されたワインに買いが殺到、
著名なワイン批評家により評価されるワインが画一化し、ワインの味わいも市場のニーズに傾倒して
いる現在のワイン界には興味がない、とラモンさんははっきり言う。そういった環境化で「完璧なワイン」
と言われるワインは必ずしも「完璧」ではない。自分達の土地・伝統を尊重して、それがそのまま表現され
ているワイン、それを「完璧なワイン」と信じる。「ワインを売るんじゃない。僕達の世界観を売るんだ。」

畑や醸造所を見せていただいた後は、隣接されたラモンさんのお宅のテラスで色んなお話をしながら
試飲。インポータでもプロでもない私にとても丁寧に接してくれた。試飲の際にはチーズやエンブティードを
出してくれた。「遠い日本から来た一人の女の子が自分のワインを飲んで、何か感じてくれて、ブログを
書いたり、電話して訪ねたいと行動を起こしてくれたことにとても感謝しているんだ。」
じーんと来る一言だった。

MasCandi300708 039

すごく自然で、ずっと話していたいって思える居心地の良さ。
眼前に広がるのは彼らのブドウ畑。
素晴らしい夕暮れのひと時。

6月の試飲会の時、5,6社いたワイナリーのチャレロはレベルが高いものばかりだった。
その中で、なぜ、Mas Candí?
味だけじゃない、造り手の人柄や情熱、一生懸命さ、そういうところに惹き付けられるものがあった。
そしてこうやって訪問できて、更なる魅力を感じることができたことに、本当に感謝。

チャレロ単一種白を造るワイナリーはまだ少ない。
初ヴィンテージも更に誕生、将来はチャレロ単一種のカバを造りたい。夢はふくらむ。

こういう人達との出会いで、改めてワインを愛してやまない理由に気付かされるのだ。
彼らの真っ赤に日焼けした顔、銅剤や土で汚れた、がっしりした手が、彼らの世界観全てを物語って
いる気がした。

ワイン好きならどうしたって、これからを応援したくなるようなワイナリー。

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ラモンさん(右)、トニさん(左)、夢の実現、おめでとう。
これからもずっとその夢を実現し続けることができますよう!

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コメント(5)

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コメントからも写真からもその時の感動が伝わってくるよ!
忙しい世の中に流されず、自分にとって大切なものを見失わずに・・ってステキよね!
yukoちゃんのワイナリーの旅はワインの事だけじゃなく、そこにまつわる人・景色とのふれあいっていう貴重なものもゲッツですな☆

TITLE: カタルーニャ人最高!
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なんか私も応援しちゃいたくなりました。
早速酒屋で探してみます!

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>tomoちん
いいとこついてるよ、tomoちん。
ワイナリーを尋ねることは、ワインを造る人、環境に直接
触れることができる、それが最大の魅力なんよ。
ワイン一本一本に、それぞれのヒストリーがあって、
それを知った上でワインを楽しむのとそうでないのとでは
全然違ってくる。
いつもコメント、ほんとありがとよぉ。
まじ、励みになってる。

>miyukiさん
長々と、読んで下さってありがとうございます!
残念ながら、国内販売はまだカタルーニャでされている
だけのようです。
カタルーニャにいらした際には是非、飲みましょう!

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素晴らしい体験されましたね!!
こういうボデガに行ってみたいんです。
プリオラートも行きたいけれど、まさに「人が造るワイン」だよね。
読んでいるだけで感動が伝わって来ます。

生産量が少なそうだから、輸出はまだかな?知り合いのインポータ−さんに紹介しようかな・・・わたしが飲みたいから(笑)

次回のスペイン旅は絶対カタルーニャ行きます!!!

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>irdecopasさん
ありがとう!
irdecopasさん、カタルーニャにいらっしゃる時には
是非一緒に行きましょう!
実はワイン和泉屋さんの新井社長にブログを通じて
紹介させていただいたんです。
http://wizumiya.blog.so-net.ne.jp/
気に入って下さったのですが、やはり他の買い付けなどに
お忙しそうで。irdecopasさんのお知り合いの方にも是非
紹介してください!輸出はまだどこにも行っていないって。
こういうボデガを見つけるべく、生涯ボデガ
を巡っていきたいなって思ってるよ。
irdecopasさんともお会いできるの楽しみに!

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